第9章 あの花畑で[△不死川実弥]
そんな生活が続き、お嬢に成長期が来た。
13だと思えない背丈は、それ相応の背丈になった。
「お湯加減は?」
「丁度いい」
「拭き加減は?」
「………普通」
しかし夫婦ごっこはまだ続く。
髪の毛を拭くが、髪の毛ぐらい自分で拭ける。
しかし断れば面倒くさい事になりそうなので、何も言わない。
「アンタこれ楽しいか?」
「?」
「夫婦ごっこ」
「逃げて欲しいなら逃げるわよ」
「そうしたら俺はアンタの足を折らなきゃならねぇ」
「お姉様の足も折ったのでしょう?」
「そうしろって言われ続けたからな」
俺だって折りたくて折ってる訳じゃない。
贄が逃げたら、あの鬼は怒り狂って一族全員どころか、俺たちも殺す。
あの鬼は何回も見たが、異様な雰囲気を出していた。
姿は成人男性だが、鋭い爪に猫の目みたいな目。
贄を見ると涎を垂らして一瞬で肉片にする。
見てて気持ちいいものじゃない。
「さぁ実弥、寝るわよ」
出された布団は1枚だった。
「……なんで布団1枚なんだよ」
「まあ!夫婦なのだから…」
「今どきの夫婦も布団2枚だよ!!」
「実弥は照れ屋さんなのね。
ならもう1枚用意するわ」
「………」
今までの贄も大変だったが、これはこれでもっと大変だ。