第8章 ほくろ[✩宇髄天元]
「なんでお前がいるんだよ……」
「見張りだよ見張り。
アンタ前に1回、点滴引き抜いて任務行ったんだって?」
「………」
「地味な顔して派手なことしてんじゃねぇよ」
は点滴の針が刺さって無い方の腕を上げ、骨張った自分の手を見ていた。
「呼吸を使う度に、自分の体が蝕われてる。
あの鬼の血鬼術はそういう血鬼術だ。
普通の鬼ならば、頸を斬ったところで術が切れるか、時間を経過して治っていくものだ。
しかし私が掛かった血鬼術は治らない。
呪いと同じだ」
「……呪いなんかじゃねぇ」
俺はその手を握り、指を絡ませた。
「治らねぇ血鬼術なんてあるのか……?
今からでも薬作れねぇか?」
「……もう遅い。見ただろ?あの吐血量。
刀は握れても、呼吸は出せない。
呼吸を使う度に体が軋むんだよ」
「……っ」
「何でお前がそんな顔するんだよ……」
力ない手で俺の頭を撫でるは、いつもより優しい笑みを浮かべていた。
「………嫁に来いサン。
そうしたら俺が看病する。ずっと一緒にいるから」
「……馬鹿だなぁ。そんな事したらお前が悲しむだけだ」
「俺アンタが好きだぜ」
「悪い趣味だな。私が好きとは……」
「アンタだって好きだろ?好きじゃなかったらこの指、絡ませねぇもんな」
「さぁな……お前の耳で確かめたらどうだ?」
「確かめるのは耳じゃねぇよ」
繋いでいる手を少しズラし、上半身をに近付け口付けをする。
ちぅ……と音がし、唇を離す。
「……馬鹿だろ」
「あぁ馬鹿だ」
「…………心残りができるじゃないか………」
「出来ていい。
そうしたらお前は生まれ変わっても俺を探してくれるだろ?」
「………思考がおかしいんだな。天元は」
「はっ、通常だと思うぜ?お前だって拒んでねぇじゃん?」
「……………眠い」
「……寝るまでそばにいてやる」
手を強く握り、が眠るのを待った。
やがて寝息が聞こえ始め、寝たことを確認した。