第8章 ほくろ[✩宇髄天元]
「よ、来たぜ」
「暇なのか?」
そう言うけど、嬉しそうな顔をしている。
顔色も前よりかは良くなっている。
しかしもう刀は握れないらしい。
だからこうして蝶屋敷で療養をしている。
「胡蝶から許可取ったから出掛けようぜ」
「どこに?」
「お前が行きたいところ。
どこにでも連れてってやる」
「言ったな?」
「えっ」
汽車を乗り継いで、着いた先は海だった。
「一回来てみたかったんだよなぁ」
「来たことねぇの?」
「ないな。泳げないから足だけ浸かるか」
そう言い、袴の裾を少しだけ上げて海に浸かる。
"中治りと言って、死ぬ前に治ったとみせかける事が起きるんです。
それは動物も……人間もそうです。
なのでさんは……持って1ヶ月でしょう。
だから宇髄さん、悔いの無い選択肢を"
胡蝶の言葉を思い出し、海に喜んでいるの隣にたち、手を繋いだ。
「なぁ、この後蕎麦屋行かねぇ?」
「なんだ、食べたいのか?」
「あー……まぁ」
「分かった。私もちょうど空いてきたし行こうか」
この様子だと、ただ蕎麦食いに行くだけだと思ってるなこいつ。