第8章 ほくろ[✩宇髄天元]
なんだかあいつの事が頭から離れなかった。
初めてあったあの日も、再開したあの日も。
ずっとあいつの事ばかり考えている。
「おい宇髄」
「なんだよ」
木刀を2本持ってやって来たサン。
そのうちの1本を俺に投げた。
「手合わせ」
「お手柔らかに頼むぜ」
サンの呼吸は雷だ。
雷でも、どこか違う。
稲妻は基本黄色や白だが、こいつが出す雷は青だった。
手合わせをしていて、柱ほどの実力があると感じた。
なのに柱になっていない。
断っているけど、御館様のご厚意で会議には参加しているのか。
それとも参加したくて参加しているのか。
「考え事は後でにしろ」
「!」
間合いを抜けられ、木刀を振り落とされた。
「はー、アンタ強ェな!」
「そうでもない」
「強ェよ」
そう言うと、ふっと笑った。
思えばこの日だった。
初めて見た笑顔に、俺は惚れた。
その日から求婚をしているが、交わされるか殴られるかのどちらかだった。
交わすはまだ分かるが、殴るは無いと思う。
「天元様、今日も失敗ですか?」
「殴る事ねぇと思うけどな……」
殴られた腹を擦りながら家に帰ると、雛鶴が聞いてきた。
「優しそうなお方ですよね!」
「まぁ……根は優しいんだとは思うけどよ……」
「また連れてきてください!今度は私たちお手製のご飯を食べさせます!!」
「……そうだな。誘いくらいなら断んねぇか」
楽しそうに話す嫁を見て、今度は求婚じゃなくて家にでも誘ってみようと思った。
だけど次の日、あいつが倒れたって情報が流れ込んできた。