第1章 辞めさせるために[☆不死川実弥]
あの出来事から1ヶ月。
彼との任務が入っても、彼女はそれを断っていた。
会議の日も、なるべく彼と離れた場所に座り、
話しかけられる前に帰っていた。
「テメェ、おい待ちやがれ」
「……………」
無視をし続けているのに、
なぜこの男は着いてくるのだろうか。
彼女は歩く速度を上げても、ずっと着いてくる彼に苛苛していた。
「チッ!
俺の話聞け!」
「………離して」
強く握られている手首を見ながら彼女は言う。
彼は舌打ちをつき、更に強く握った。
痛みに顔を歪めた彼女は、もう一度平手打ちをかましてやろうかと考えていた。
「嫌いって言った次は無視かァ?」
「そうさせたのは君でしょ」
「いい加減にしろよテメェ……」
「いい加減にするのはそっちだよ。
ずっと着いてきて何のつもりさ」
「テメェに一つだけ教えてやる」
冷たい声に彼女はビクッと肩を震わせた。
「テメェは嘘をつく時必ず目を逸らすんだよ
餓鬼の時からそうだ。
あの時聞いた時、お前はそうだと言った。
だけどお前は目を逸らしていた。
幼馴染ナメんなよ。
テメェの癖なんて全部分かってんだからよォ」
「なら尚更放っておいてよ。
離してよ」
「来い」
半ば強引に引っ張られ、着いた先は風柱邸だった。
彼女は拒み続けたが、男性の力に叶うはずもなかった。
彼は乱暴に彼女を畳の上に投げ倒し、上に乗りかかった。
「目ェ合わせやがれ。
テメェが本心言うまで俺は退かねェ」
「降りてよ」
「聞こえなかったか?
本心言うまで退かねェつってんだよ。
嫌いって言ったこと、あれ本心か?」
「……そうだよ」
彼女がそう答えると、彼は舌打ちをつき、
顎をつかみ無理矢理己の方を向かせた。
「もう一度聞く。
俺の事嫌いか」
「……だったらなんなのさ」
「………嫌いなのは自分だけって思ってんのかァ?」