第1章 辞めさせるために[☆不死川実弥]
「……ならテメェ、なんで今泣いてんだ」
「は………」
泣いてるはずない。
ポタポタと畳に雫が落ちる音が聞こえ、
彼女は自分の目から流れているものを確認するかのように、
指でそれをすくった。
「嫌いなんだろ」
ちがう
「……嫌いさ」
「冷たくしたからか」
ちがう
「……そうだよ」
「」
名前を呼んだ時、彼女は顔を上げた。
それを見計らったかのように、彼は彼女に口付けをした。
掴まれていた胸倉はいつの間にか離されていて、
その代わり、彼女の腰と頭に回されていた
彼女がどれだけ彼を押しても、彼はビクともしなかった。
逃がさないと言わんばかりに、頭と腰を掴む手は強くなった。
口付けは段々と深いものに変わっていき、
卑猥な音を立てて彼女の口内を犯していった。
唇が離れた時、彼女は彼の頬を平手打ちした。
「っ、最低…!」
「最低なのはどっちだ。
俺が何のために冷たくしたと思っていやがる。
なのにお前は柱になりやがって。
かと思ったら、今度は"嫌い"だとか言いやがって」
「冷たくした理由なんて知りたくもない!
君の自分勝手な理由でしょ!
どれだけ……どれだけ傷付いたか………!」
「…………俺はただお前を守りたかっただけだったんだよ」
「…それが冷たくした理由?
やっぱり勝手だよ。
もう二度と……話しかけて来ないで」
彼女は流れてる涙を腕で乱暴に拭い、
風柱邸を後にした。
1人残された彼は、ぶつける場所の無い苛立ちを静かに堪えていた。