第7章 恋をする資格[〇不死川実弥・宇髄天元]
「じゃあこの傷はどうやって説明すんだよ」
宇髄先生は私の腕を引っ張り、右袖を肘まで上げた。
「刺された痕だよなこれ。お前雨の日右腕庇ってんだろ。気付かねぇとでも思ったか?左での作業が多くなるからな」
「離してくださいって」
「この傷が、俺を嫌いな理由か?」
「もういいでしょう?また後日話しましょうよ」
冷静を装ってるけど、自分で分かるくらい声も震えてるし腕も震えてる。
先生も分かってるはずなのに離してくれない。
私が話すまで離さないのか。
「教えてくれ。お前が何に苦しんでるのか」
「もういいですって……!離して……!」
手を振りほどこうとした時、宇髄先生と私の間に不死川先生が入ってきて、私と先生の肩を掴み反対側へ押した。
「大丈夫?」
カナエ先生が私の隣に来て、上がっていた袖を下ろしてくれた。
先に戻ってろと先生が言った。
カナエ先生が私を支えながら、一緒に歩いてくれた。
「これが男のやることかァ?」
何を聞いても黙りな宇髄に問い詰めた。
好きな奴を2回も泣かされて平気な男はいない。
「堂々と宣戦布告してきやがったくせに、自分が何したか分かってんのかァ?」
「あいつの事が知りたかった。ただそれだ」
「"それだけ"?それだけなのにわざわざ袖捲りあげたのかァ?あいつが1番聞かれたくねぇことをお前は何回も聞いたんだろうが」
「宣戦布告したよりも前から俺には勝ち目がなかった。楽しそうに話してるお前ら見るとイライラすんだよ。あいつの秘密を知ってるのもお前、好物を知ってるのもお前だけ。
入る隙なんてないのは分かってんのに……知りたくて堪んねぇんだよ」
ここまで自分勝手な奴だとは思わなかった。
影でやり取りを見ていたが、カナエ先生に止められてなかったら最初の時点で飛び出していた。
遠目からでもわかるぐらいアイツは震えてたのに、涙声だったのに。目の前にいるこいつはそれに気が付いていなかった。
仮に気が付いていたとしても、こいつは絶対手を離さなかった。
が話すまでずっと。
「あぁそうかィ。なら一つだけ教えてやる。
あいつの秘密はあいつ本人から聞いたんじゃねェ。
ただの俺の勘だァ」
これ以上ここにいたら殴ってしまいそうだったから、それだけ吐き捨て職員室に戻った。