第6章 霞と微風[☆時透無一郎]
2人が恋仲になって暫くしてから、柱稽古が実施された。
竈門禰豆子が太陽を克服してから、鬼の出現がピタリと止んだ。嵐の前の静けさみたいだった。
全ての稽古が終わり、邸に戻ると無一郎がいた。
「無一郎」
「おかえり」
「ただいま」
日向ぼっこをしている無一郎の隣にも座った。
太陽がちょうどいいくらいに暖かくて気持ちよかった。
「たぶん、もうすぐ鬼舞辻との戦いが始まる」
「……うん」
「ねぇ、逃げていいからね。死ぬって思ったら逃げていいんだからね」
「……逃げないよ」
「なんで?僕はもうこれ以上失いたくないんだ…」
「好きな人が戦ってるのに、逃げられるわけないよ」
困ったように微笑みながら言う彼女を見て、無一郎は抱き締めた。体は微かに震えていて、泣いているのだと察した。彼女も抱き返し、落ち着かせるよう背中をトントンと優しく叩いた。
____緊急収集、産屋敷襲撃
無限城に落ちた鬼殺隊士たちは、次々と降って湧く鬼を殲滅していった。
上弦の陸、参、弐を討伐したという情報が流れ、無一郎が壱と遭遇したという報せを受けた。
は無一郎のところまで行く決意をし、鬼を殲滅しながら急いで走った。
「無一郎!」
無数の柱がある場所に、ただならぬ雰囲気の鬼と、刀で柱に固定されている無一郎に、その様子を影で見ていた玄弥がいた。
が来たことに気が付いた無一郎は、逃げろと言ったが、聞く耳を持たなかった。
「……ほぉ…怒りで頭に血が昇っていたが……冷静さを取り戻したな……」
「よくも私の恋人を傷付けたな」
「恋仲とは………そうか……しかしお前が……私を倒せると?」
「やって見なきゃ分からないだろ。柱の継子をナメるな」
彼女は刀を構え直し、軽く息を吸った。
霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り