第6章 霞と微風[☆時透無一郎]
何が起きたか分からなかった。
記憶が戻ったと言われて、あの日の約束のことを謝られ、そうしたら好きだと言われ、互いの唇が合った。
唇が離れた時、無一郎はのたれている髪を耳に掛けた。
「…………」
「記憶がなかった僕も、あの日あった僕も、のことが好きだよ。継子でもなんでもない」
「…………頭打った?」
「かもね」
崩れている体勢を直し、彼女はまた正座をした。
無一郎も体を起き上がらせ、対面するように座った。
「は?僕のこと好き?」
「いや…好きかどうかは分かららないけど…嫌いじゃないのは確かだよ。じゃあ手とか繋いだのも?」
「うん。好きでもない人と手なんか繋がないよ」
「…………朝起きれないのも?」
「それは本当」
「……」
「僕と付き合ってくれませんか」
突然の事でなんて返事をすればいいか分からなかった。
無一郎のことは嫌いではなかった。
でも好きかと聞かれると、答えられなかった。
自分の気持ちに自信がなかったから。
「…………自信ないよ」
「知ってる。でも僕頑張るから」
「……」
「ねぇ、もう1回してもいい?」
その質問に頷いた。
無一郎は微笑み、もう一度唇を合わせた。