第6章 霞と微風[☆時透無一郎]
懐かしい夢を見た次の日、無一郎は刀鍛冶の里へと向かった。は行かなかった。その間稽古は不死川が代わりに行っていた。
「お前が時透の継子かァ?」
「ハイ……」
あまり会ったことがなかったので、不死川の圧に彼女は負けていた。顔が怖いし傷だらけだし威圧的だしで恐怖の気持ちになっていた。
しかしいざ稽古をしていくと、自身の癖を指摘してくれたり、良かった点を言ってくれたりした。
無一郎とはまた違う指導の仕方だった。
「今日もよろしくお願いします」
「あァ。昨日言ったところ気を付けながらやれ」
「はい」
稽古をしている最中、無一郎の鎹鴉の銀子が飛んできた。
「あれ時透の鴉じゃねェかァ?」
「ほんとですね。何かあったのでしょうか」
腕を出すと、銀子はそこに止まり胸を張りながら言った。
「耳ノ穴カッポジッテ聞キナサイ!上弦2体ヲ倒シタワ!」
「え?」
「はァ?!」
「アノ子ハ1人デ伍ヲ倒シタノヨ!流石ダワ!」
「え、じゃあ他の上弦は……?」
「フン!上弦ノ肆ハ竈門兄妹ト不死川玄弥、甘露寺様ガ倒シタワ!」
「!」
上弦の伍と肆を倒した。それは大きな兆しだった。
「ん……?不死川玄弥……?不死川……?」
聞きなれた苗字を聞き、彼女は不死川の方を見た。不死川と目が合ったが、彼は逸らした。
「……弟さんいたんですね……」
「弟なんかいねェ」
「無理がありますって」
「うるせェ!とっとと稽古再開するぞォ!!」
そう言う彼の顔は、微かに笑っていたのは誰も知らない話。