第6章 霞と微風[☆時透無一郎]
風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風
鬼の断末魔が響き渡る。
鬼が塵になったのを確認し、刀を鞘に収めた。
結んでいた髪の毛を解き、腰を抜かしている隊士に手を差し延ばした。
「大丈夫?」
「あっ、ああ…」
「万が一もあるから蝶屋敷に行って診察してもらうといいよ」
「あ、ありがとう!」
「うん、気を付けてね」
隊士と別れた後、彼女は深いため息を着く。隊士の質が低いと聞いていたが、まさかここまでとは思っていなかった。
彼女が来た時、既に隊士は腰を抜かしていて刀は地面に落ちたままだった。彼女が来なかったらあの隊士は確実に死んでいたし喰われていた。
「好きです!付き合ってください!」
この間助けた隊士が、彼女を見つけたと同時に告白をした。彼女は思考が停止し、好物の金平糖を落としそうになっていたところで、ハッとした。
「いや…えっと……」
「助けて貰った時から好きになったんだ!」
「まぁうん…でもごめん。私今は誰とも恋人になるつもりないんだ」
「そんな……」
「ごめんね。私よりもっといい人いるから」
そう言っても、隊士は食い下がらなかった。彼女の手を握り、猛烈に愛の言葉を言っていた。
困り果てた彼女は、どう逃げ出すか考えていた。
「何してるの」
その声に隊士は肩を震わせた。彼女が後ろを振り向くと、無一郎がいた。
「と、時透様…!!」
「何してるの」
「あっ、いやっ、これは…」
「早く手離して」
「は、はい!!すみませんでした!!」
隊士が逃げ去ったあと、無一郎は彼女の手を握った。
「どうしました?」
「気を付けてよ。君、意外とモテてるんだから」
「はぁ…?」
モテてると言われても告白されたことは今が初めてだ。なんの事かと思った彼女は首を横に傾げた。