第5章 素直じゃない[○我妻善逸]
「ねぇ、付き合ってないなら手とか繋がないでよ」
ほらやっぱり来た。
昨日のあれを見られていたのか、それともただ言いに来たのか、女子生徒は怒った口調で彼女に言った。
「なら本人に言ってよ」
「言えるわけないじゃん。嫌われたくないのよ」
「………なんであいつが好きなの」
ボソッと言った言葉は、どうやら彼女の耳に届いてしまったらしく、舌打ちをつかれた。
「好きっていうか、利用できるじゃん?アイツ女好きでしょ?彼氏にしたら何でもしてくれそうじゃん!」
「くだらない。そんな理由でアイツと付き合うんだったらやめた方がいいよ」
「あんたには分からないわよ!!」
分かるはずもないし、分かりたくもない。
善逸は耳がいいから、相手の感情までも汲み取ってしまう。
あなたの本性も全部分かってしまうから。
付き合うのは勝手だけど、後悔するのはあなた。
黙っていると、いつの間にか持ってきたペットボトルの水が私の頭に降ってきた。
ポタポタと水が落ちる音が聞こえ、それを見ていたクラスメイトたちの話し声が一気に無くなった。
「調子乗ってんじゃないわよ。あんたみたいなやつ、私の仲間の手ですぐにやられるんだから」
「自分の手は汚さないんですね。まぁ今汚したけど。
おめでとう。善逸は君みたいな女の子微塵も好きじゃないから。
退いてくれる?生徒手帳出しに行かなきゃ。君のおかげで」
濡れた教科書などをそのまま鞄に全て入れ、生徒手帳に早退と書き、教室を出た