第4章 飴[○不死川実弥・宇髄天元]
授業が終わり、そのまま準備室に向かった。
扉を開けると、は俺の方を向いた。
さっきまで泣いていたからか、目が少し赤かった。
「ごめんなさい授業……ありがとうございます」
「構わねぇよ俺はァ。落ち着いたか?」
「あ、はい………。
すみません子供みたいに……」
「いや、泣かせた宇髄が悪い」
あいつもあいつだ。しつこく聞くからこうなる。
まぁアイツの気持ちは分からなくもない。
現にの目の下には隈が濃く写っていた。
思い出させてしまったのなら申し訳ことをした。
そのせいで眠れなくなってると思う。
本人が話すまで俺は何も聞かない。
本人のためでもあるから。
「5限は出ます」
「おゥ、俺も5限は授業あるからなァ」
「ありがとうございます、飴」
「あァ」
まだ少しだけ元気は無いが、さっきよりも顔色は良かった。
「……俺は怖くねぇのかァ?」
「………はい」
「じゃあアンタが泣きたい時いつでも来い」
自分でもかなり恥ずかしいことを言ったと思う。
誰にも言えずに1人で泣くくらいなら、誰がそばにいた方がいいと思ったから。
「よく分かんないけど………わかりました」
「ん」
今のこいつに出来ることはこのくらいだ。
自分の気持ちを伝えたところで、困るのは俺じゃない。
"先生も煙草吸うんですね。あ、ライター使います?
煙草吸わないとやってられないですよね"
電子タバコだったのを、お前と同じ銘柄を吸いたくて紙に戻した。
煙草を吸ってる時間だけが、お前と二人きりになれる時間だったから、どんな時間よりも好きだった。