第4章 飴[○不死川実弥・宇髄天元]
最近は夢で見なくなったのに、また見るようになってしまった。
感触が起きたあとも残っていて気持ちが悪かった。
その感触を消すように朝にシャワーを浴びるようになった。
それでも感触は消えなかった。
もうあいつはいないのに。
消えない傷がいつまでも私に縛り着く。
「先生、隈酷いけど寝れてますか?」
「……そんなに酷いですか?」
「かなり……」
渡された鏡を見ると、確かに隈は酷かった。
メイクで隠しきれていなかったから、持ってきてあったメガネをかけた。
「寝れてねぇの?」
「……………寝れてます」
話しかけないでくれ。
あなたをアイツと重ねてしまうから。
「隈、ひでぇぞ」
「分かってます」
落ち着け。落ち着け。
頼むから落ち着け。
腕がカタカタと震え始め、
その震えを止めるように腕を押えた。
「宇髄先生その辺に………」
様子を見ていたカナエ先生がそう言ってくれたが、
宇髄先生は構わず私に話し掛けてきた。
「そんなひでぇ顔して寝れてるって言われても信じられねぇよ」
「だからっ!」
強く机を叩いたとき、ハッとした。
やってしまった。落ち着いてお願い頼むから。
「……ごめんなさい。少し頭冷やしてきます」
「あ、おい!」
逃げるように職員室を出た。
これ以上あそこにいたらダメだと感じたから。
アイツと話したくなかったから。
数学準備室のドアを開け、息を整えるかのように深呼吸を繰り返した。
お願い止まって……。
震え止まって………。
落ち着いて……大丈夫
ガラッと扉が開く音が聞こえた。
振り返れない。怖いから。
今の私を見られたくないから。
「平気か」
「…………平気です」
「何となくアンタのその傷の理由が分かった」
「……………勘も鋭いんですね不死川先生」
ガチャンと鍵が掛けられた音と、ドアに着いている小窓のカーテンを閉める音が聞こえた。
「」
初めて先生に名前を呼ばれ、その驚きで振り返る。
先生は私の顔を見て、苦しそうな顔をした。
「……何で先生がそんな顔するんですか……」
「人の秘密を知っちまったから…」
「………ははっ…」
視界が歪み始めると同時に、煙草の匂いに包まれた