第4章 飴[○不死川実弥・宇髄天元]
次の日から、宇髄先生は私に対して気持ち悪いくらい優しくなった。
大量の教材を持って歩いていたら、半分持ったり。
自販機の前で何を飲もうか考えていたら、奢ったり。
正直言って鬱陶しい。
「アンタ最近宇髄と仲良いんだな」
「そう見えるんだったらいい眼科紹介しますよ」
喫煙所で不死川先生とそんな会話をする。
うん、やっぱり先生といる方が落ち着く。
「正直言って鬱陶しいです」
「だろうなァ。俺だったらぶん殴ってた」
「ぶん………そこまではいかないけど、生徒の間で変な噂経ってるから勘弁して欲しいんですよね」
「"宇髄先生と先生は付き合ってる"ってかァ」
先生も知ってた。
本当に勘弁して欲しい。聞いてくる生徒もいるから本当に。
宇髄先生はなんて答えてるのか。
「付き合ってないですよ」
「知ってるゥ」
「吸殻床に落ちますよ」
そう言うと、先生は灰皿に向けて吸殻を落とした。
そういえば先生、銘柄変えたんだ。
私と同じ銘柄になってる。
前までiQOSだったのに紙タバコに変わってる。
「アンタ恋してるかァ」
「してないです」
「だろうな」
「何で聞いたんですか」
タバコも短くなり、灰皿に押し付け火を消す。
先生もちょうど無くなったみたいで同じことをした。
「………見るつもりはなかったんだけどよ」
「?」
喫煙所を出る時、先生は聞いてきた。
「腕の傷、それどうした」
その言葉を聞いた時、心臓がうるさく波打った。
「……なんでそれ………」
「アンタが酔っ払ったあの日、俺の服着ただろ。
デカかったのかアンタが腕を上にあげる度に下まで落ちて、その時に見えた。
聞くつもりはなかった。
アンタが年がら年中長袖着てるのもソレが理由か」
どうしよう、なんて言い訳しよう。
知られたくない。教えたくない。思い出したくない。
「…………悪かった変な事聞いて。戻ろうぜ」
宇髄先生といいこの人といい……
思い出させるのはやめてくれ……