第4章 飴[○不死川実弥・宇髄天元]
喫煙所に行き、上着のポケットの中を手探りで探す。
あぁそっか……ライター先生に貸したっきり戻ってきてないのか。
借りパクとやらをされた。
軽く溜息を着くと、横からライターが来た。
誰か確認をする前に、タバコに火をつけた。
「ありがとうございま……」
顔を上げると、美術教師がいた。
「……………」
「…………」
タバコはまだかなりある。
これを消して出ていくのは少し勿体無い。
だけどコイツと同じ空間にいたくない。
この間の事を聞かれる可能性があるから。
「この間は悪かった」
「……………いえ」
「あと職員室でのことも」
「……………」
「震えた原因は話したくねぇか」
「話す必要あります?」
思い出させないでくれ。頼むから。
「聞いただけだ。あとこれお前のだろ。
不死川が返しとけって」
「あぁ…………」
ライターを受けとり、バーコードの方を見る。
確かに私のライターだ。
直接返しに来ればいいのに。
「俺、本気だから」
「は?」
「お前のこと好きだから。
もうこれからは雑にいかねぇ。
振り向いてもらうよう頑張るから」
「いや……私は……」
「じゃあな」
言いたいことだけ言ったのか、宇髄は去っていった。
1人残された喫煙所内は不気味なくらい静かだった。
"ほら、気持ちよくなってきただろ?
お前はただ寝転がっているだけでいいからね"
あいつのせいだ。思い出したくもなかったのに。
あんな奴に好きだって言われても、私は恋なんてする資格はない。
私はもう綺麗じゃないから