第1章 辞めさせるために[☆不死川実弥]
不運にも、あの言葉を発した次の日、
彼と複数の一般隊士達との合同任務だった。
「おい」
この男は私に話しかけてるのだろうか。
彼女はそう重い足を止めた。
いつもは向こうから話し掛けてくることは無いのに、
なぜか今日は話しかけてきた。
「なに」
「テメェ昨日のあれ本気で言ってたのかァ?」
「本気だと捉えるならそうだよ」
「誰に向かって"嫌い"つってんだァ?!」
「君に向かって言ったんだよ。
あの場には君と私しかいなかっただろ」
そう言うと、彼は彼女の胸倉を掴んだ。
一部始終を見ていた隊士はオロオロとし始めた。
「……なに」
「テメェ調子乗んなよォ……」
「別に乗ってない。
離してくれない?苦しいんだけど」
「クソ女が……」
「はっ、口悪っ。
柱辞めた方がいいのどっちだろうね。
そんなんじゃ隊士たち震えちゃうよ」
淡々と喋る彼女に苛付きを覚えた彼は、
乱雑に彼女の胸ぐらから手を離した。
「あと君に言うことがあったんだった」
「あァ?!」
「必要最低限話しかけて来ないで。
近付いても来ないで。嫌いだから」
君が望んだことだろ?
彼女の目はそう言うかのような目をしていた。
彼は舌打ちを付き、ズンズンと先に進んで行った。
遅れて隊士たちも進んでいき、その後ろを彼女は歩いた。
横笛の音が聞こえ始めた。
音のする方を向くと、一体の鬼が岩の上にいた。
「今晩は。可哀想な兎たち。
今宵は俺のご飯になりに来てくれて有難う」
「……」
「何人も何人も鬼狩りは来たけれど、皆、今はもう俺の胃の中さ。
大丈夫だよ兎たち。怯えなくて。
苦しいのは一瞬だけさ。
俺の血鬼術は幻覚を見せる。
辛い幻覚ではない。幸せな幻覚だ。
さあ、君たちはこの幸せを蹴り破ることが出来るかな?」
鬼は横笛を吹いた。
彼女と彼は急いで耳を塞いだ。
両耳を塞いでいるから、刀は抜けない。
横笛が鳴り終わるのを感覚で待つしかない。
そう思っていると、目の前から彼が歩いてきた。