第1章 辞めさせるために[☆不死川実弥]
「テメェは才能もクソもねぇからとっとと辞めろォ」
風柱、不死川実弥は、目の前にいる女性隊士にそう吐き捨てる。
女性隊士は悲しそうな表情を浮かべ、
何も言い返すことが出来ずに、羽織を強く握った。
そこから女性隊士は必死に鍛錬をし、
柱に登り詰めた。
同じ柱だから認めてくれると思ったが、
彼はよりいっそう強く彼女を非難した。
彼女と彼は幼馴染だった。
彼女は彼の家の手伝いや、下の子たちの面倒を一緒に見ていた。
しかしある日彼の家に行くと、そこは血だらけとなっていた。
彼の姿もなく、もうこの世には存在しなくなったと思った。
2人が再開したのは、彼が17、彼女が16の時だった。
彼女は嬉しくなり、話しかけたが冷たくあしらわれた。
何かの間違いだと思い、会う度に話し掛けていたが、
返ってきた言葉はどれも冷たい言葉だった。
「テメェが柱になったところで弱ぇのは変わりねぇんだよォ。
分かったらとっとと辞めちまえ」
「私は君の言うことは聞かないから」
「テメェ……!」
「嫌いだよ、今の君は」
毎日毎日冷たい言葉を浴びせられ、
彼女は彼のことが嫌いになっていた。
"嫌い"
その言葉を聞いた時、彼は一瞬だけ目を見開いた。
暫く沈黙が続き、彼は舌打ちを着いて彼女から離れた。
(……いつからこうなったんだろうか)
1人になった彼女はそう思った。
心のどこかでは、また昔みたいに話したい。
そう思っていたが、今の彼の態度を見る限りそれは叶わないことだと悟った。
(柱になったから君と話せるって思ってた私が馬鹿みたいだ)
"嫌いだよ、今の君は"
自分が放った言葉が、頭の中にこびり付く。
自分でもあんな冷たい声が出るとは思わなかった。
(……君も私の事が嫌いなはずなのに)
「なんであんな顔したんだよ……」
彼が何を考えてるかなんて、
彼女には何も分からなかった。