第3章 どっちかといえば、アーモンドアイだったわ
口に含んだ瞬間、最初に感じたのは鼻を刺激する、山葵の辛味。それを喉の奥に飲み込むと、思いの外、まったりとしたミルクの様なクリーミーな喉ごしの後にどういう原理か強烈なソースのような痛烈で芳醇な、檸檬にも似た酸味が舌に突き抜ける。
個々が主張しまくってて、素材本来の味が殺しあっているかの様に思えたが、最後の最後口の中に残るイカスミの風味に全てがひれ伏し追従した。
最初『狂気の絵心スペシャル混沌』とかなんとか言ってこの中のスープ白黒斑の変なカップ麺出された時は、出した本人の口に無理やり容器ごと捻り込んでやろうかと思った。
不味い訳ではない。見た目のグロテスクさや最初に感じた味が気にならない位、不本意な事に美味い。
何とも名状しがたい、混沌とした、他にない味。絶妙な塩梅。
選手たちの映像を見ながら。また、買ってきてと頼んだが返事がない。チラリとそちらを見たら、買いにいった本人は宇宙猫背負いだして、部屋にいた他二人は変なものを見るような目でこちらを見ていた。
「どっちかといえば、アーモンドアイだったわ」「そーじゃないでしょ」