第4章 あ、罰ゲーム何にする?
データ整理も漸く終わりが見えてきて、ひと息つこうと台所へ向かう。
もう深夜も近い時刻。誰もいない筈の台所から香る。昆布と煮干の出汁の効いた醤油のスープの香りが鼻を伝って食欲を刺激する。
ふらふらと吸い寄せられるように台所に入れば、その芳醇な香りが、強まる。
黄金色に輝く細ちぢれ麺、味のよく染みていそうな半熟の煮卵、柔らかそうな叉焼、そして色鮮やかなかいわれ大根。
目にも鼻にも美味しいであろう事はダイレクトに伝わってくる夜食のラーメンは背徳的に美味い。経験上よく知っている。
生唾が口の中に溜まり、飲み込めば予想より音が出ており作り手は此方を振り返る。
「や、あの、すみません。休憩がてら水を飲もうと思いまして」
早く此処を立ち去ろう。そして、買い置きしておいた激辛ラーメンを食べようと心に決めた。帝襟を作り手は手招きして、スプーンと小皿を差し出す。
よくよく見ると、塩、味噌󠄀、醤油。
3種類のラーメンがあった。
「どれにするか味を見て決めていいよ」
差し出されたスプーンで一口ずつスープを掬い味わう。
スッキリとした見た目からは想像できない暴力的な旨味が舌を刺激する。もう一口食べたいところだが、ここで一つ確認。
3つしかないラーメン。調理器具はすでに片されてる。つまり、
誰か一人、ハブられる。
その中に自分が除外された事に喜ぶべきかこの後、食べ損ねた上司に仕事というイビリが来ないか、少しの不安も無かった訳ではなかったが、
仕事明け、空腹の最中目の前に差し出されたら、断るのは強靭な精神を持っていても無理。食べられないだろう誰かに謝罪をして、食べたいものに手を伸ばした。
「あ、罰ゲーム、何にする?」
「何でこっちを見る!?」