第1章 DOGS HUNT DOGS
それから30分後ーーー
一機のヘリがとある上空に差し掛かろうとしていた。
その地上では血塗れの人間達と、それを追い詰めている影が2つ。
その現場が確認できた瞬間、上空にも関わらずにドアが開く。
ジャラッ
「装填」
その影の1つに狙いを定め、手に持っていた銃弾に力を込めたのはーーー
「重力操作」
そう呟いた声と共に弾は目標を貫き、ドオッという派手な音を立てて地面を割った。
「なっ……!?」
『超音速狙撃!?しかし射撃音が無かった!』
追い詰めていた方ーーー
特殊制圧作戦群・甲分隊、通称《猟犬》と呼ばれる五人が内、末広鐵腸と条野採菊は、突然の襲撃に驚きを露にした。
「莫迦やってんな探偵社!首領の指示で拾いに来てやったぜ!」
襲撃者ーーー
ポートマフィアの五大幹部が一人、中原中也は弾丸が山のように入った箱を片手に弾に触れる。
「ほらよ、銃撃戦だ」
ーーー『重力操作』
ドドドドドッ……
弾を猟犬の二人に向かって打ち放つ。
末広の剣が、その弾丸の雨を弾いて対処している隙に、血塗れの人間達ーーー探偵社の人数分ワイヤーロープを下ろす中也。
「今だ!捕まれ!」
探偵社の四人が、そのロープを捕まえると、
「莫迦な……今の探偵社に協力者が……!?」
ヘリはその場を離れていったのだった。
無事にヘリに引き上げられた四人。
「真逆……マフィアに助けられるとはな……」
最初に口を開いたのは国木田独歩だった。
「助ける?莫迦云え。お宅の社長が首領と取引したんだよ。救助の対価は「社員一人のマフィア移籍」だ」
「「「「!」」」」
中也の一言に驚く四人。
「使いやすい異能犯罪者は大歓迎だぜ」
「社長が……!?」
「いや……でもあの侭だと全員逮捕され与謝野さんも殺されてました。それを思えば……」
谷崎は苦い顔をしながら、そういうと
「その通りだ。理想論ばかりでは命は救えん、現実的にならねば」
「「「!?」」」
一番この提案を否定しそうな国木田があっさりと飲み込んでいることに驚きを隠せない他三名ーーー
「国木田さん……今なんて?」
「頭でも打ったのかねェ」
「本体が切られた所為では?」
「本体……?」
谷崎、与謝野、宮沢のヒソヒソ話にも反応せずに国木田は黙りこんだままだ。