第4章 いつかの約束
個室に入り、注文を済ませてそのまま雑談をする。
主な話は会っていなかった三年間のこと。
私の学校での話も、に〜ちゃんの高校と大学と“Ra*bits”の話も。
昔みたいに話せる時間がこんなにも楽しくて嬉しいなんて。
結局願いは全部叶っちゃってるんだよね(笑)。
しばらくすると注文したものが届き、店員さんが部屋を出ると
に〜ちゃんは改めて向き直り「本題に移ってもいいか?」と聞く。
きっと今までその話に触れなかったのは、店員さんに聞かれることを恐れたんだろう。
緊張しつつも頷くと、に〜ちゃんも緊張した面持ちで話し始めた。
「順を追って話すぞ。あのライブの後、寮のおれの部屋の前で薫ちん…“UNDEAD”の羽風薫って人に話しかけられたんだ」
『なんとなく聞いたことある、かも?』
「あいつ、女の子に目がなくて誰彼構わず一緒に遊んでるんだ。そいつが会場でお前を見かけたらしくてデートしたい、って言ってきたんだ」
…ん?
え?ちょっと待って、さすがの私でも“UNDEAD”は知ってるし、
確かその人って二枚看板?とか言われてる人だよね…?
そんな人が?デート?私と?
なんの冗談…?
「なんか勘違いしてるかもしれないけど、今日呼んだのはその話じゃない。ちゃんと説明するから落ち着いてくれ」
『ごめん…その話じゃなかったとしても驚くけどね、普通…』
「おれは澪とのデートはするな、って言ったんだ。そしたらその話を同室のレオちんと夏目ちんに聞かれてたらしくて」
なんで私とデートするなって言ったんだろう…
話聞いてればわかるかな?
「レオちんが部屋の前で話してた内容で曲作りたいって言い出して」
『…それ必然的に私巻き込まれてない?』
「そう。だからそれも断った。澪に迷惑がかかるかもしれないから、って」
そこでに〜ちゃんは一呼吸おいた。
小さく深呼吸をしたようだ。
「それを全部断ったのは、おれが澪のこと好きだからなんだ」
『え…』
「小さい時は一緒にいるのが当たり前すぎてわからなかったけど、離れてみておれは澪のことがどうしようもなく好きなんだって気付かされた」
『に〜ちゃんが、私のことを…?』