第4章 いつかの約束
に〜ちゃんを含めた“Ra*bits”のライブは大成功に終わり、
うちの両親とに〜ちゃんのご両親と“Ra*bits”のメンバーのご好意で楽屋にまで行かせてもらえた。
に〜ちゃんは私を見て「忘れるわけない」って言ってくれた。
それがすごく嬉しくて、舞い上がって。
推しに会えた両親も叔母さんも喜んでて誘ってよかったな、なんて思いながらずっと話し続けた。
それだけで充分幸せで、黒須家はしばらく平和だった。
後日、両親伝にに〜ちゃんが私に会いたがってると聞いた。
『…それなんの冗談?』
「冗談じゃないよー?できるだけ早く会いたいってなずなくんが」
『私は別にいつでもいいけど…』
「ならそう言っとくね♪」
うわ、絶対この人楽しんでる…
回りくどい連絡方法しか取れないので数日置いてから待ち合わせ時間と場所を聞いた。
いまだに半信半疑だし、目的もわからず困惑するばかり。
悶々としたままあっという間に当日になってしまった。
に〜ちゃんは気を遣ってくれたのか、休日のお昼前を指定してきた。
アイドルに休日という概念はないだろうから私が休みの日曜日だ。
指定されたカフェに行くと、そこは個室になっているようで人目を気にしなくていいらしい。
いや、でも個室って…
どの部屋にいるとかわかんないんだけど!?
伝達ミス?
そもそもこのカフェって予約制なのかな?
どうしよう…
「あれ、澪?来るの早かったな」
ふと後ろから聞き慣れた声がして振り返ると、
やっぱりそこにはに〜ちゃんがいた。
「待たせたか?」と聞かれたがほんとに今着いたばかりだったので首を横に振った。
人のこと言えないけど待ち合わせ時間の十五分前に来るって…
に〜ちゃん待たせることにならなくてよかった…
『に〜ちゃんこそ。私は迷いそうだったから早めに家出たけどに〜ちゃんはそんなことないでしょ?』
「おれから誘っておいてお前を待たせるわけには行かないからな!着いたのはお前のほうが早かったみたいだけど(笑)」
あはは、と笑って店内にうながされる。
自然な動作でドアを開け、私を先に入れてくれる。
そのままに〜ちゃんは個室を取ってくれた。