第3章 復帰ライブ
あのあと、おれら四人は星奏館に帰ったわけだけど、
自分の部屋に入る前に薫ちんに話しかけられた。
「なずなくん、ライブお疲れ様〜」
「薫ちんもお疲れ様。どうかしたか?」
「俺、たまたま聞いちゃったんだけど、今日のライブになずなくんの幼馴染ちゃん来てたんでしょ?」
「…薫ちん、それどこから聞いてきたんだ?」
「それは言えないなぁ。まぁ、ほんとにたまたま会場付近で話してるの聞いちゃっただけなんだけど。あの子、ちょー可愛くない?俺、タイプだなぁ♪」
胸がざわついたのがわかった。
睨まないように、声に棘がないように、慎重に口を開く。
「薫ちん。澪に何する気だ?」
その言葉はおれも驚くほど冷たい声だった。
いつもと雰囲気が違うのを察したのか、薫ちんの顔つきが変わった。
「やだなぁ、そんなに睨まないでよ。でも、なずなくんがそんな顔するってことは大切な子なの?」
「当たり前だ。久々に会ったとはいえ、幼い頃はずっと一緒だったんだぞ」
「ふーん。なずなくんを介してデートに誘いたいとこだったけど…今回は諦めるよ。せいぜい俺に取られないよう頑張ってね♪」
「…誰が薫ちんに譲ると思ってるんだ」
最後の呟きはきっと薫ちんには届いてないだろう。
深呼吸をしてから部屋のドアを開ける。
「ただいま〜ってレオちん、なんでそんなにキラキラした目でこっちを見てるんだ?」
「ナズ!さっきの話は本当か!?」
「さっきの話ってにゃんのことら!?」
「ドア前で羽風センパイと話してたことだヨ。月永センパイ、ずっと聞き耳立ててたヨ」
「その口ぶり、絶対夏目ちんも内容聞いてただろ!」
「さァ、なんのことだろウ」
「さっきのナズとカオルの会話で霊感が湧いてきそうなんだ!だから詳しく聞かせてくれ!」
「人の話を曲にしようとするにゃ!」
澪の話になった時に場所を変えるべきだった。
レオちんが部屋にいる可能性はいくらでもある。
こうなったレオちんは満足いくまで話を聞きたがる…
興味なさげな雰囲気だけど、夏目ちんも気になってる。
また胸がざわつく。
落ち着け、レオちんといえどちゃんと話し合えばわかってくれるはずだ。