【ONE PIECE】Completed〈ジェルマ妹〉
第4章 〈1章4話3P〉【10 11 12】
〈第1章 子供時代編〉【10 さよなら】
〈04/10話│1(1/2)/3P│1400字〉
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その日は新月だったんだろう。日が落ちてからはいつもより暗い夜が帳を下ろしていた。
カツーン、カツーン………
わざと足音を鳴らしてここ最近の通い慣れてしまった寂しい通路をゆっくりと歩く。
先程は姉兄達とみんなで訪れたけれども、今はいつものように一人で来てる。いつもと違うのは時刻。
深夜にばかり人知れず訪れていた場所に、初めてそこの主が眠ってない時間に訪れている。
「ロクジュ……!!」
まだ牢までは少し距離がある場所なのに、足音に反応してか、サンジがガシャンと鉄格子があるところに来て、嬉しそうな声とテンションで私の名前を呼んだ。
「やっぱり来てくれたんだな!日中はみんながいたから声をかけなかったんだ」
(他のみんなと一緒に『今回気づいた』って思われてるだろうから、ちょうどいい……)
「…にいさま………」
「…びっくりしたろ。ごめんな……側にいてやれなくなって。でも、大丈夫だからな!こんなトコロでこんなのかぶってるけど、おれは元気だ。ご飯も今までより豪華になったし、本もたくさんあるし、言ったら簡単な料理みたいなことだってできるんだ。これでおまえが……」
「にいさまっっ!!!」
サンジはやっぱりすごくひどい辛い目にあっていても、私の前じゃ平気なフリで【強い兄】になろうとする。
(だとしたら[サンジ]の『強くあろうとする意味』が変わってしまうから……)
ぐっ、と拳に力を入れた。
「……さ、さよならをいいにきたの」
「え……」
泣かないように、真っ直ぐに強くサンジを見て視線を上げて移す。彼の表情は分からなかったけど困惑している雰囲気。そして息を深く吸って一気に言う。
「わたし、さいきんくんれんがすごくすごーくたのしいんだ!あしでまといのだれかさんがいなくなって、やっとぜいいんがとおんなじレベルになれたみたい。それにね、ろうなんかにいれられてるにいさまはかっこわるいから………だから、わたしもにいさまはもういいの。いらないの。だからさっさとどっかにいってよ!」