第4章 《1部/前編3/5話/3P》07 08 09
〈第1章 子供時代編〉【07 サンジ】
〈03/10話│1(2/2)/3P│1500字〉
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恒例のサンジを治療した後は、夕食も食べずにさっさと自分の部屋に引きこもる。
倒れるように柔らかい布団に身を沈めて枕に顔を埋めながら、ただサンジのことばかりを考えていた。
(彼はルフィ達に絶対必要なメンバーだ)
かの[運命]に辿り着くための紆余曲折の始まりは、まずは[ジェルマ]に産まれたサンジが亡き者扱いをされて、こっそり地下牢に入れられることから。
なんだかんだで半年後に傭兵業で[赤い土の大陸]を越えて[東の海]に行った時に、レイジュさんが牢から逃がしてサンジは全てを捨てて立ち去る。
そうして───客船で見習いコックをしている時に[赫足のゼフ]と運命的に出会い、あのとてつもない悲劇的な事件を二人で経験して[海上レストラン・バラティエ]を創設。
ゼフさんから様々なことを学んでとても素敵な人に成長して、その過程で………[運命の出会い]が叶う。
なので、サンジの未来はすごく明るい。
(でも………今の彼にとっては[ジェルマ]が[原作]みたいにいやな物じゃなかったら?)
こたびのこの話には『私がいるから』なんて大それたことは言えないのだけれども、少なからず私はずっとサンジの味方だったから『私といる時には気を許してくれていた』くらいには思えてる。
(いつもいつも心配してくれてから『心配できる私』がいるせいで、彼の本来のような旅立ちにはならないだろうし、その決心が揺らいだらどうしよう………どうしよう)
「なかよく、ならなければよかったのかな…」
だけれど、なにもかも違うこの世界。
一般からは、仕組みも常識もかけ離れている。
とても恐ろしい場所で、私は確かに[サンジの優しさ]や[強さ]に救われていたのだ。
(本当に彼がいたから、どんな辛いことでも、めちゃくちゃに恐いことでも乗り越えてこれたと感じてる。まさかこんな風になるとは思わなかったけれども……)
「サンジ………」
思い出すのは、照れたように笑う顔。
優しく頭を撫でてくれる温もり。
サンジと過ごしたこの日々は、短くても『幸せばかりがあった』と間違いなく言いきれる。
その日は……泣きながら眠った。
