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こちら、MOB飼育係5[ktkb]

第6章 時田カオル目線2


 話を聞くと、彼女……笠田サツキさんは、俺がクビになったフォーチュン研究所に潜入調査をしていた記者らしい。
 実は、俺もいたんです、クビになったんですが、と話をすると、もしかして時田カオルさんですか? と聞き返され。俺が戸惑っていると、なんとキノコ人の「おらふくん」から話を聞いたと言うから驚いた。
「ということは、貴方もキノコ人の観察担当を……?」
 俺は懐かしさと後悔をない混ぜたような気持ちになりながら恐る恐る訊いてみると、サツキさんはこくりと頷いた。
「はい……一週間しか担当していなかったんですけどね」
 そうなると俺が気になっていたのは、フォーチュン研究所が火事になったことだった。なぜ研究所が火事になったのか、彼らキノコ人たちは無事なのか。
「火事になったのは、原因不明で……警察は、誰かのタバコの不処理だったんだろうって言ってましたけど」それからサツキさんは顔を上げて。「でも、MOBたちは全員助かってましたよ。みんな、飼い主さんや新しい飼い主さんのところに行ったみたいですし、キノコ人たちはこの山でMOB楽園を作るって言ってたんです」
 サツキさんは記者というだけあってなかなかの情報通らしい。とはいえ、MOB楽園とはなんだろうか。
「MOB楽園?」
「行く宛てを失ったMOBたちを受け入れる楽園を作るらしいです」
 それで、この山に来たんです、とサツキさんは話を終える。MOBたちだけで楽園を作るとは一見不可能に聞こえるが、キノコ人は人間の姿に近かったし、それも可能なような気がしてきた。
 そっか。彼らは新たな目的を持って今を生きているんだ……。俺は心から安堵感を覚えた。
「それで、カオルさんはあのあと何を?」
 と聞かれ、俺は自分の身の上話をすることとなった。フォーチュン研究所で上位研究者として働いていたこと、その研究所の怪しさを追及しようとしていた時にクビになってしまったこと。
「だから、ずっと後悔していたんだ。研究所には罪のないMOBたちがいたから、どうにかして助けることが出来たんじゃないかって」
 自分の中にあった後悔を他人に吐き出したのはこの時が初めてだった。言葉にするとこんなにも悲しくて悔しい気持ちがより強くなり、俺は話し続けることが出来なかった。
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