第6章 時田カオル目線2
「私も、思ってました……」
隣を歩くサツキさんもそう言って俯いた。彼女にも彼女の辛さがあるのだろう。俺はそれ以上追求しなかった。
「それで、俺たちはどこに向かってるのかな」
俺は話題を切り替えようとサツキさんに質問した。案内するつもりだったが、俺もこの辺りがよく詳しい訳でもなく。彼女はおおよその場所ならキノコ人のいるところが分かるという話だったが、相変わらず見えてくる景色は森ばかりで俺は少し不安だった。彼女は何か大きな葉っぱを取り出してうーんと唸る。
「もう少しだと思うんですよ……この地図だと」
「地図?」
「これ、地図なんです。この描き方は、おらふくんかな」とサツキさんは言う。「キノコが染料になるみたいです。時々こうやって葉っぱにお手紙を描いてくれていて」
「へぇ……」
俺は葉っぱに描かれたものを覗き込む。山なりに描かれた黒い線の真ん中に黄色い丸があり、そこにピンク色で矢印が指していたのだ。見る限り山の中腹に目的地があるようだが、とてもザックリとした地図にも見えた。
「あ、見えてきましたよ!」
「え?」
サツキさんが指す方向を見上げると、森の奥が明るくなっていた。この辺りはよく歩いていたのに、開けたところがあったなんて……とサツキさんと一緒に俺はその明るみに進み出た。
そこには五人のキノコ人が確かにいた。真っ黒なキノコみたいなツルハシで地面を耕していたり、葉っぱに何か絵を描いていたり、小さいMOBと会話をしていたりする彼らの姿が。
俺はようやく、彼らは無事だったのかと安堵して息を吐いた。
「あ」
そして紫のキノコ人の足元には、あの緑のニワトリと牛と豚がいた。そこにはもう救急箱はなかったが、赤いキノコ人が彼らの元に走り寄って声を掛けているのが聞こえた。
「ぼんさん、どこ行ってたんですか!」
すると紫のキノコ人がこう答えた。
「あー、最初のMOB楽園の……お客さん?」
彼らMOB楽園計画は、もう進んでいるようだ。