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こちら、MOB飼育係5[ktkb]

第5章 時田カオル目線


「こんにちは、登山ですか?」
 この森は山みたいにはなっているが、登山をするようなところでもない。怪しい人かなと思いながら俺が声を掛けると、彼女は人当たり良さそうな柔らかい笑顔で受け答えした。
「こんにちは。いえ、ここまで来るのは初めてなんですが……」と彼女は言いながら、首からぶら下げている立派なカメラを軽く持ち上げた。「あるMOBを探していて、撮影したいと思っていたんです。……あ、名刺渡しますね!」
 俺が怪しい人かもと不審がっているのが伝わったのか、女性はそう言って名刺を渡してきた。名刺には、雑誌記者だと分かる事柄などが書いてあった。
「記者さんでしたか……! でも、ここにそんなに珍しいMOBなんて……」
 言いかけて俺はハッとした。まさか、彼女はあのキノコ人がここに住んでいることを知っているのだろうか。そうだとかなりマズイ。ようやく酷い研究所から脱走したキノコ人が、人間にまた晒されるようなことがあれば何か嫌なことが起こりそうだ。
「良ければ案内しますよ。俺、ボランティアでこの辺りのMOBの怪我の手当てをして歩いているんです」
 もうあの時みたいに後悔したくない。俺は自分が名乗ることも忘れてそう提案すると、女性は何も疑う様子なく笑顔を崩さなかった。
「そうなんですか! だったらあの、聞きたいことがあるんですが……」
「聞きたいこと?」
「この辺りに、体からキノコが生えたMOBを見たことありますか?」
「え」
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