第4章 たいたい牛目線
「きおきお、大丈夫か?」
「あーありがとう、たいたい。たいたいといると安心するわ〜」
俺が心配してやってるというのに、きおきおはヘラヘラと笑ってばかり。ガチで言っているのか冗談で言ってるのか俺にはさっぱり分からない。
「けど、その怪我はなんとかしないとな。……って血出てるじゃん!」
俺はきおきおの羽に結構な切り傷があってびっくりする。何笑ってんだよ、コイツ!
「舐めとけば治る……って俺ニワトリだから舐めれねーわ」
まだふざけたことを言うきおきおに俺はわざとらしくため息をつきながら、近くに使えそうな葉っぱがないか探してみる。さっきの人間が追いかけてきている気配もない。
「さっきの人間、なんだったんだろな」
と俺が言いながら手頃な葉っぱを前足で踏みつけてちぎる。これでも巻いとけ、と俺はきおきおの羽に葉っぱを巻きつけた。
「ありがとう、たいたい」きおきおは葉っぱを巻いた翼を見ながらお礼を言う。「けどさっきの人間、悪い人間には見えなかったんだけどな」
「そうやってまた捕まったらどうすんだよ……」
きおきおは人のことを信用し過ぎるところがある。牧場にいた時に散々な目に遭ったというのに、もう忘れたというのだろうか。
「おーい」
そこに聞き覚えのある声が。振り向くと小さな豚が、口に何か咥えているのが見えた。