第3章 おおはらMEN豚目線
「あ、逃げたな」
きおきおが怪我をして数分、よく知らない人間が出てきて数秒、そしてたった今、たいたいに乗ったきおきおは二匹とも勢いよく走ってどこかに逃げて行った。
俺はというと小柄な豚の体を活かして茂みに隠れていた。きおきおに何かしようとしていた人間を注意深く見張っていると、小声が聞こえた。
「怪我の手当てをしたかったのに……」
テアテ……手当て?
きおきおのあの怪我、治せるのか?
俺はもう一度その人間をよく観察してみた。その人間は白い箱みたいな鞄を持っている。あれは俺も見たことがあった。救急箱だ。
そうと分かれば話は早い。俺は茂みから飛び出して人間の二つの足に体当たりをした。
「うわぁ?! ぶ、豚?! こんな山の中に?!」
人間は簡単に転んでそんなことを騒ぎ始めたが俺には関係なかった。俺はさっさと救急箱を咥えて奪い取る。あとは走るだけだ。
「ま、待て! それがないと他のMOBたちの治療が出来ないじゃないか!」
なんて人間は言っていたが、人間の話す言葉はちょっと難しくて俺にはよく分からなかった。
俺はきおきおとたいたいを探した。あいつら、どこに行ったんだよ!