第1章 1
「大丈夫、他人の彼女さんには手は出さないよ」
それを聞いて、私は、あ、と声をあげた。
──その2人には見覚えが…。
……もしかして…
「は、原田さんと…Ryuさんですか…っ!?」
2人の男の人は互いに顔を見合わせて、フッと笑った。
それから、私の顔を見て頷く。
───私、顔面蒼白。
「松本くんはまだちょっとかかるみたいだから、先に中に入りなよ」
原田さんにそう言われ、私は2人と一緒にホテルの中へと入り、なぜかそのままRyuさんのお部屋へ案内され、2人と一緒にお酒を飲んでいる。
「ホントは打ち上げで外に出る気でいたんだけどねー」
「す、すみません…」
原田さんとRyuさんは、慣れてくると見た目に依らず結構気さくで、終始ニコニコと笑いながらおつまみを口に運んでいた。
「それにしても、まさかライブに来るとはねぇ…」
「あの時の松本の様子は笑えたな」
「あぁ~、あの、陽葵さんを見つけた時ね!!」
「演奏終わって、一回裾に引っ込んだ時の松本を見せたかったな」
「ははは、かなり動揺してたよね」
「…え?」
私は首を傾げる。
そんな私に原田さんは、やはりニコニコ笑いながら話してくれた。
「松本くんが陽葵さんと握手した後、曲が全部終わってから一回裾に引っ込んだでしょ?その時、松本くんさ、すっごく動揺してて、ずっと『何で!?何であいつがいるん!?』って呟いてたんだよね」
原田さんが確認するようにRyuさんに問うと、Ryuさんも頷きながら笑っていた。
「動揺しまくって、松本のやつ、裾にいる間にビール一缶空けてたんじゃないか?」
私は話が飲み込めなくて、楽しそうに話す原田さんとRyuさんの顔を交互に見ていた。
それに気付いて、原田さんが補足を入れてくれた。
「やましいことが無くても、不意打ちには弱いんだよ、男って」