第9章 脅威
その声を聞いて恵は絶望する。
宿「そう怯えるな、今は機嫌が良い。少し話そう。」
宿儺は嗤う。
宿「なんの縛りもなく俺を利用したツケだな。俺と代わるのに少々、手こずっているようだ。」
体の主導権を握っているが時間の問題だろう、と言う。
宿「そこで今、俺に出来ることを考えた。」
恵「なっ!?」
宿「虎杖を人質にする。」
そう言い胸の中心に手を突き入れ取り出したのは悠仁の心臓だった。
そして無造作に放り投げる。
宿「俺は心臓なしでも生きられるがな、虎杖はそうもいかん。俺と代わることは死を意味する。………駄目押しだ。」
そう言い先程、自分で回収した宿儺の指を飲み込む。
飲み込まれた指が宿儺になじんでいく。
宿「さて、晴れて自由の身だ。もう脅えて良いぞ。」
そして宣言する。
宿「殺す、特に理由は無い。」
恵「あの時と立場が逆転したな。」
目を伏せポツリと呟く。
恵「虎杖は戻ってくる、その結果死んでもな。そういう奴だ。」
宿「買いかぶり過ぎだな。コイツは他の人間より多少、頑丈で鈍いだけだ。先刻もな、今際の際で脅えに脅えゴチャゴチャと御託を並べていたぞ。断言する、奴に自死する度胸は無い。」
恵(腕が治ってる………、治癒。反転術式が使えるんだ。)
宿「せっかく外に出たんだ。広く使おう。」
恵は考察を重ね鵺を召喚する。
宿(面白い、式神使いの癖に術師本人が向かってくるか。)