第8章 対峙
宿「良い良い。……………ここで死ね。」
先程まで上機嫌で話していたが、ふいに声が低くなり右腕を振り払う。
その一撃で呪霊は後頭部から床に叩き付けられる。
呻き声を出す呪霊。
宿「ほら頑張れ、頑張れ。」
嗜虐的に笑う宿儺が足を上げ虫でも踏み潰すかのように呪霊の顔面を踏み抜く。
衝撃が走りコンクリートの橋の様になっていた床に亀裂が入り崩壊する。
瓦礫が降下する隙を縫って宿儺の足を掴む。
宿「おっ。」
呪霊が宿儺の足を掴んだまま振り抜いて投げ飛ばそうとしたのだろう。
だが、途中で気付く。
呪霊の腕が無くなっていた。
宿「呪霊と言えど腕は惜しいか?」
崩壊する瓦礫の上に宿儺が胡座をかき嗤う。
一緒に落下していた夜空を、いつの間にか小脇に抱えて。
宿「我々は共に“特級”という等級に分類されるそうだ。俺と……オマエがだぞ?」
見上げる先には呪霊が居り虫の標本の如く四肢を、もがれコンクリートの柱に埋め込まれていた。
等級は同じ“特級”だったが歴然とした差が、そこにはあった。
呪霊は言葉を話せず宿儺に倣い四肢を再生し埋め込まれた柱から脱出する。
ここからだ、と言いたげな笑みを浮かべていた。
宿「嬉しそうだな。誉めてやろうか?だが呪力による治癒は人間と違い呪霊にとって、そう難しい事ではないぞ。オマエも、この小僧も呪いのなんたるかをまるで分かっていないな。」
宿儺は、そう言い嗤う。
宿「良い機会だ、教えてやる。本物の呪術というものを。」