第8章 対峙
轟音が鳴り悠仁はゴムまりの様に吹き飛んだ。
『悠仁!』
呪霊の拳は悠仁ごと壁を、ぶち抜き大穴を開けた。
崩れ落ちる悠仁だったが咄嗟に起き上がり身を庇う様に腕を前に突き出す。
呪霊が再度バリアの様なものを拡げ呪力を押し付けられ足元は、その重圧に耐えられず砕け突き出していた右腕も指先から焼け付き崩れ散る。
悠(痛い痛い痛い、辛い辛い辛い、なんで俺が。あの時俺が指なんて拾わなければ、喰わなければ!あの時!!あの時!)
悠仁の脳裏に後悔が渦巻いていた。
“やめろ、考えるな”と思っていても頭の中に浮かんでしまう。
悠(嫌だ!もう嫌だ!!逃げたい!逃げたい!!死にたくない!ここで死んだとして、それは“正しい死”か!?)
雄叫びを上げて気勢を張り上げるも現実は覆らず呪霊の放つ呪力の勢いに耐えきれず悠仁の体が宙を舞う。
悠(俺は、こんなに弱かったのか!)
悠仁の右手指も欠損し力無く項垂れていた。
悠「自惚れてた、俺は強いと思ってた。死に時を選べるくらいには強いと思ってたんだ。でも違った、俺は弱い。」
『悠仁!』
そう言い立ち上がった悠仁だったが前向きな気持ちでは無かった。
悠「あ”ー!死にたくねぇ!!嫌だ、嫌だぁ!………でも死ぬんだ。」
涙に鼻水を垂らし死を実感していた。
『そんな事、言わないで!大丈夫………だから!!』
夜空は励ます様に声を掛けるが自分の力では、どうにもならない事を悟っており声は弱々しいものだった。