第7章 自分の為に
恵「扉は!?」
慌てて4人が振り返る。
先程まで、あった扉は消えている。
代わりに大小のパイプが密集していた。
『扉が無くなってる!』
悠「なんで!?」
野「今ここから入ってきたわよね!?!?」
恵「大丈夫だ。コイツが出入口の匂いを覚えてる。」
玉犬に問いかけると出入口の匂いを覚えているとの事で脱出は容易いようだ。
夜空と悠仁が、その言葉を聞いて玉犬の頭をわしゃわしゃと撫でる。
『流石、玉犬!偉いぞ!!』
野「ありったけのジャーキー持ってきて!」
その様子を見て恵が堪えきれなくなったのかツッコむ。
恵「緊張感!」
悠「やっぱ頼りになるな、伏黒は。オマエのおかげで人が助かるし俺も助けられる。」
恵「進もう。」
玉犬に頼りながら先へ進むと人としての原型を留めていない2人の死体と唯一原型を留めている1人の死体、合計3人分の死体が転がっていた。
野「『惨い…………。』」
悠「3人…………で良いんだよな。」
夜空、野薔薇は同じ言葉を口元に手を当て漏らす。
恵はこの光景を見ても、やはり冷静で死体の数を数えている。
悠仁が唯一、原型を留めている死体に近づき少年院の制服に縫い付けてある名札を見ると入口で保護者が呼んでいた息子の名前だった。
彼女の言葉が脳裏を過ぎる。
悠「この遺体、持って帰る。」
恵「え。」
悠「あの人の子供だ。顔は、そんなにやられてない。遺体も無しで“死にました”じゃ納得できねぇだろ。」