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ロドスの日常[方舟]

第27章 サリアの魅力


「私のも淹れてくれるのか。私はブラックで構わない」
「オッケー」
 へぇ、サリアはブラックなんだ。ちょっとだけオペレーターのことを知れて嬉しくなるのを抑え、私はコーヒーを注いだカップをサリアに運んだ。
「ありがとう」
「こちらこそだよ」
 早く来てくれて書類の整理を手伝ってくれるなんて、本当はいい人なんだろうなと私は思う。サイレンスと仲が悪いのは頂けないが。
 私はデスクの席に着き、ようやく仕事に取り掛かる。サリアがコップを手にしてコーヒーを飲む様子を凝視しないように気をつけて……。
「ドクター」
「な、何っ、ごめんね?!」
 唐突のサリアからの言葉に私は咄嗟に謝ってしまった。サリアの表情はあまり動かなかったが、なぜ謝ったんだ? という顔はしていた。
「アーミヤから聞いたんだが、お前は褒美があるとやる気が出るらしいな」
「へ」
 なんだその話。私は知らないが。
「私で出来ることならドクターに褒美を与えたいと思っていてな。何か私にして欲しいことはあるか?」
 とサリアは私を真っ直ぐ見つめる。
 これがただの可愛いだけの女の子だったらハニートラップだ。だがサリアはそういうことをするような人ではないし、何より善意から来ている発言だと彼女の普段の性格からも分かるので私はますます困惑した。
「えっと……頭撫でるとか?」
 オペレーターたちの頭を撫でることで自分も癒し効果を得ているのは自覚があった。とはいえサリアになんてことを言うんだと私は慌てて言い直そうとしたが、次に返された言葉がこれだった。
「そんなことでいいのか? それならいくらでもいいぞ」
 え?
「えっ?」
 今サリアなんて言った? 私は仕事の手を止めてジッとサリアを見つめたが、そこには厳格で真面目な横顔のまま書類整理をする彼女しかいなくて、戸惑った。
「いいの? サリア……」
 私が聞くとサリアはもう一度目を上げて視線を合わせてくれる。
「それでお前の仕事の効率が上がるなら容易なことだろう」
 サリアは特段変わった様子もなくそう答えた。
「……頑張るわ」
 のちの仕事が思っていた以上に捗ったという話は、語るまでもないだろう。

 おしまい
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