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ロドスの日常[方舟]

第22章 モフモフ尻尾の誘惑


「うたた寝をしているドクターは温かいので、ここでお昼寝でもしようかと」
 と言いながらプラマニクスは私から離れたが動けはしなかった。どうやらプラマニクスは、防護服の裾を下に座っているらしい。
「別に私でなくても……」
 と言ってソファから起き上がろうとするが動けない私。プラマニクスは構わず話し続けた。
「ドクターだからこそドクターのそばでお昼寝をしたいのです。そこのソーンズから話は聞きましたよ。書類業務は終わったのでしょう?」
 そうだったけ、とソーンズへ目で問い掛けるが、元々彼は口数が少ない。だが必要なことははっきりと話す人物ではあるので、何も言わないところ答えはYESなのだと思われた。
「お夕食の時間には起こしますから、もう少し寝ていましょう? 私もここにいる間は、ゆっくりしていたいのです」
「それは……」
 私は即答出来なかった。今ここには私とプラマニクスとソーンズしかいないが、執務室はよく人が来る。私の足元にプラマニクスが寝ていたということで、あらぬ疑いは掛けられないだろうかというセクハラ疑惑問題の方が心配なのだ。
 しかしプラマニクスはこちらが何も答えていないというのに、まるで子どもをあやすように私のお腹をぽんぽんと叩き、何か子守唄を口ずさんだ。カランドの唄だろうか。プラマニクスの声と相まって美しく心地よかった。
 それに伴いプラマニクスのふわふわな尻尾が私のお腹や背中を優しく包み、どんなものよりも優れた毛布のようだった。私が尻尾に弱いことはオペレーターたちには知れ渡っていることだろう。ソーンズは助けてはくれなさそうだし、プラマニクスの誘惑に身を委ねても……と思いかけてハッとした。
「あのさ、ソーンズ」
「なんだ」
 私が呼び掛けると、ソーンズはようやく目を上げた。私は両手をソーンズに差し出した。
「念の為、私の手首をキツく結んで欲しいんだ。あと足も」
 唐突な頼みだったが、ソーンズは一瞬考え込んだように目を逸らしたのち、分かった、と呟いた。
「あら、そんなことしなくてもいいですのに……」
 とプラマニクスは言ったが違うのだ。私はケルシーの言葉に今でも縛られている。この状況でまたケルシーに何か言われると私のハートが持たない……かもしれないのだ。
 しかし私の言ったこの言葉がまた別の疑惑を広めることになるとは、この時はまだ知らなかったのである。

 つづく
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