第19章 スズランと毒
ロドス艦内の巡回を終え、さて、残りの仕事も片付けるか、と執務室に戻ってくるとスズランがソファに座って待っていた。あれ、何か用事があったのかな、と声を掛けると、まるで太陽みたいに輝いた笑顔を向けられて私は一瞬たじたじになる。
「あ、ドクターさん、お待ちしていました!」
すっと綺麗な姿勢のまま立ち上がり私を見上げるスズラン。幼い。あまりにも幼い。それは逆に恐怖を感じてしまう程に。
「何か用事があったかな? スズラン」
私は途中の仕事を抱えてなんとかスズランから目を逸らす。しかしスズランはそんなことは気にしないだろう。
「療養庭園に咲いていたドクダミをお裾分けしてもらったので、ドクターさんにも分けてあげようと思ったんです」とスズランは話す。「あ、大丈夫ですよ! 私が淹れてあげますから!」
そうしてスズランはひょこひょこと歩き出し、ポットを用意しようと簡易キッチンへ向かう。
「ありがとう、スズラン」
私が礼を言うと、はい! と元気で温かな笑顔で返事をするスズラン。なんて優しい子なんだろうと私は思った。
とりあえず私は書類をデスクに置き、ソファでスズランがハーブティーを淹れてくれるのを待った。