第16章 ドクターはトターに夏服をプレゼントしたい
「ドクター、今日の秘書は俺だと聞いたが、間違いないか?」
「間違いないよ。ありがとう、トター」
「分かった」
今日の秘書はトターである。トターは私の回答を聞くなり悠然と歩いてソファに腰を下ろす。そこにお茶を置いてあったのが遠目から見えたからだろう。
「書類作業のことなんだが……」
「ああ、それは大丈夫。今日の分は終わらせたからね」
と私はクローゼットに向かった。今日トターに来て貰ったのは他でもない、このためである。
「それより、トターにやってもらいたいことがあってね」
「なんだ? 大小構わずどんな任務もやろう」
「これなんだけど……」
私が取り出した白い服を見て、トターは眉間に皺を寄せた。トターに見えやすいように遠く離れたつもりなのだが……。
「それは……なんだ? ドクター」
とうとう訊ねるトター。私は服を広げた。
「トターの夏服だよ。いつもお世話になっているから、感謝の気持ちを込めて」
と私が答えるとトターは大きく目を見開いた。