第15章 アフロと聡明
「どうせお前に渡るんだから、お前に直接渡してもいいだろう」
始末書を書き終えると私にすぐ渡してくるソーンズ。そうなんだけど、技術部の方を通さないと怒られるんじゃないかな〜。
「……なんだ、それは」
その時、私の手元にある書類にソーンズが目を向けた。それはいつもの許可書だった。だがソーンズが見ているのは書類の内容ではなかった。
「これ、興味深い計算式だな」
「あ、これ?」
それは書類の隅に書いた私の落書きだった。手癖でつい書いてしまうのだが、これがなんの計算式なのか、そもそもこれは数字だったのかと私も指摘されるまで気づかなかった落書きだった。
「分からないけど、時々不思議な数や記号を書いていることがあるんだ。私が、研究者だった名残かな?」
私が記憶喪失だったことはロドスにいるオペレーターたちはほとんど知っているはず。ソーンズは、ちらりと横に視線を移動させた。何か考えている時の顔だ。
「お前がこうやって落書きを始めたのはいつからだ」
突然の質問。何か難しいことを聞かれるのかと思ったらそんなことだったのか。