第13章 ジェイの憂鬱
そして二日後。俺は予定通りドクターの秘書に就いた。
「手ぶらもなんだと思いやしたんで、軽食を持って来やした。いつでも食べて下せぇ」
「ありがとう、ジェイ」
そこに置いて、と言われた通り軽く作って来たものをテーブルに置く俺。大将はずっと、書類と端末とモニターに囲まれている。相変わらず忙しそうだし、冷えても美味いやつ持って来て良かったな。
にしても例の話はどう切り出すか。書類整理しながらタイミングを伺うか……。
「それでさ、一昨日の作戦はどうだった?」
まさかの大将から話を振ってきた。またとない絶好のチャンスだ。俺は大将の前に机越しに近づいた。
「それなんすがね、大将……」
「え、トラブルでもあった?」
大将がようやく顔を上げた。いつも防護服にフードを被っているのは、大将の顔バレ防止なんだろうが、ここまで近づくとその真っ直ぐな目が俺に向けられていることだけはよく分かる。
「いや、大したことはねぇんす。ただ、その……」
俺は一旦言葉を切る。こんな大したことない話、わざわざ大将に話す必要があるだろうか。
大将はじっと俺を見つめている。俺はそこまで饒舌じゃねぇ。ここまで話して誤魔化す言葉も見つからないので、思い切って話すことにした。
「あの時の編成、俺以外顔いい奴らばかりじゃないっすか」
「え」
あ、この言い方は嫌味っぽく聞こえるかもな。俺は次の言葉を必死に考えた。
「いや、文句がある訳じゃないんすよ。作戦はスムーズに終わりやしたし、すごく動きやすかったんす。ただ……みんな顔がいいんで、俺だけ浮いたっていうか」
「イジメられたのかい?」
「いやいやいや、違いやす! 違いやすから!」
あの気のいいオペレーターたちに、まさかイジメられる訳がねぇ。ちょっと変な奴らもいるけど、作戦は問題なかったし、ただちょっと……。
あ、そうか。俺は嫉妬してたんすね。
顔がよくて性格もいい。大将のお望みのようになれない俺は、あの編成メンバーにヤキモチを妬いていたんだ。