第12章 優しく逞しく
「頭撫でて欲しいのか? それくらいいくらでもやってやるぞ」
「え……っと」
確かに私は、頭を撫でることは多くなっていたが、頭を撫でられることはなかったな……と思っていると、フリントは迷わず手を差し伸ばしてきた。そして私の頭をぽんぽんと叩いたのだ。フラついてしまったが、私の体が貧弱過ぎなだけだろう。
「あ、力強過ぎたか?」
私が黙っていたからか、フリントが心配そうに目を見開いた。私は咳払いをした。
「いや、驚いただけだ。ありがとう、フリント」
ちょっと力は強過ぎたが、頭を撫でられるという行為は絶大な癒し効果を得られるのだろうと再認識する。なるほど、頭を撫でられたいオペレーターたちがあんなにも列を成した理由がよく分かった。
一方のフリントは満足げに笑って、私にこう言ったのだ。
「その代わり、アレを取ってくれないか? 棚の一番上に空の花瓶があるだろう?」
そこで私はようやく立ち上がり、彼女が指す棚を見上げた。確かに棚の上には花瓶がある。だが、私ですら届かない高さだ。