第12章 優しく逞しく
フェンがみんなから貰ったものを身につけているのを見ていいな、と呟いたのをきっかけに、ハイビスカスが彼女にあげたものと同じ紫のリボンをくれた。
といっても、私のこの防護服には似合わないかな……と悩みながら宿舎をウロついていた時、スチュワードから逃げ回っているカーディにぶつかって紫のリボンを落としてしまった。私は慌ててしゃがみ込む。どうやら棚の下の隙間に落ちてしまったみたいだ。
棚には沢山の荷物や観葉植物などが置いてあった。私一人で動かして取るのは難しそうだ。誰かに助けを求めるか、または長い棒か何かで取ってみるか……と悩んでいた時に彼女は現れた。
「どうした、ドクター、そんなところにしゃがんで」
「フリント」
そこには、首にタオルを巻いたフリントの姿があった。髪が湿っている辺り、訓練所か何かに行ったあと、シャワーを浴びてきたところなのだろう。彼女から花の香りがした。
ドライヤーでもう少し髪の毛を乾かしたらいいのに、と私が立ち上がろうとすると、フリントがグッと顔を寄せて優しく微笑んできた。