第5章 癒しの尻尾
「……サラサラしている」
キアーベと違い、マッターホルンの尻尾はサラサラしていた。いつまでも触っていたい。心が癒されるみたいだ。
「あまり気にしたことはないですが……」マッターホルンは言う。「少し、くすぐったいですね」
「あ、すまないっ」
私は素早く両手を上げた。お互い男とはいえやってることはほぼセクハラだ。同意とはいえ! 同意とはいえ!!
「私のことは気になさらないでください。私から振った話ですから」心境を察してくれたのか、マッターホルンはそう言ってくれた。「尻尾といえばプロヴァンスの方が心地よさそうですが、私でよろしかったんですか?」
「むしろマッターホルンでいいんだ……プロヴァンスに頼んだらそれこそセクハラだ」
私は、前にケルシーから見ているだけセクハラ罪を掛けられそうになった。そんなことは断じて出来ない。
それでもマッターホルンは、ドクターのためなら尻尾を触らせてくれそうですが、と呟いていたが、私は頷かなかった。頼めるのはマッターホルンだけだ。キアーベには、もう頼まない方がいいかもしれない。
「私の尻尾ならいつでもお貸ししたいのですが、これから長期任務に出るので、しばらくドクターには会えないんです」
とマッターホルンが言った。ああ、そうだった。私の楽園は今日で終わりなのか、と落胆していたところに更に一言。
「提案なのですが、こういうのはどうでしょう」