第9章 夏だ!海だ?…の前に!
―――部屋に戻ると。
「馨……?」
戸の前には馨がいる。
「天原さん……」
二人で部屋に入った。
「どうしたの?」
言うと馨は何だか口をもごもごさせている。
「そういえば夏休みに有沙と別荘に行くんだって?」
馨に言えば彼はポカンと口を開く。
そして、納得したとばかりに頷く。
「もう聞いたの?天原さんも来るよね?」
「うん。私も一緒にって誘われた」
『真人も誘おうかなって』言うと馨は又もごもごした。
どうしたんだろう?
何か様子が変だ。
「馨もついに彼女持ちですか」
言うと彼は大きく首を横に振る。
「そ、そんなんじゃないしっ!」
真っ赤になる馨が可愛い。
……やっぱり可愛いんだよな、馨は。
私のいたずら心がうずうずしてしまう。
「あ、あんな形でさ、みんなが見てる中でヒドイ体験させちゃったし、何か悪いなって」
優しいんだ、馨は。
だからギャンブルも弱い。
つけこまれちゃうんだろうな。