第8章 『いっぷ』ではない事3
「アルタ先輩、お迎え」
すっかり衣服を脱いでしまった裸の私が言えば、アルタ先輩は笑う。
「ちょっと位遅くなって平気さ」
言って、額にキスされる。
ベッドの上で体を寄せた。
「アルタ先輩は私が好きなんですか」
からかうつもりで言うと彼は考え込む。
「僕は今まで恋愛というものをした事がないんだ。本なんかで読んでいるからどういう物かは知っているつもりだ」
―――好きな人のことを考えると動悸息切れがしたり、夜眠れなかったりするんだろう?
と、アルタ先輩。
動悸息切れって、更年期障害じゃないんだから。
「美希さんにはそういうのは無いな」
そこからアルタ先輩はちょっと黙った。
「でも、美希さんと居ると小春日和の中にいるみたいに何だかぽかぽかして、隣に居ると良い香りがしてる気がして、どんな勝負にでも勝てる気がするんだ」
真人といい、私から良い香りとは……?
―――そしてこれは聞いてる方が恥ずかしいんですが……。
「これって君が好きなのかな?」
抱き締められる。
「知りませんっ」
嬉しいけど、まだうやむやにしていたい。
でも抱き返して、白い頬にキスを降らす。
「いつか教えてね」
アルタ先輩はやっぱり不思議ちゃんだ。