第8章 『いっぷ』ではない事3
今度は私からアルタ先輩の手を握って歩き出す。
アルタ先輩はもっと早く歩けるだろうけど私に合わせてくれた。
何だかドキドキする。
アルタ先輩が私に合わせて歩いてついてきて。
私は真人じゃない男性を初めてお部屋に連れ込んじゃう訳で。
『かとる』のお部屋は不可侵領域。
だから。
―――これは『いっぷ』じゃない事。
部屋に入って、一応鍵をかけた。
「アルタ先輩、ゴムありますか?」
開口一番それか、と自分でも思う。
「うん。持ってるよ」
え、と、ここからどうすれば。
「まず君の口に入れれば良いの?」
アルタ先輩が無邪気に聞いてくる。
「何知識なんですか、ソレ?」
「アダルトな動画」
……まあ確かに?
アダルトな動画だと女が口でペロペロしてから合体って流れか。
―――そういう事しか知らないアルタ先輩はとても無垢なのでは?!
それを部屋に連れ込んで、これは『いっぷ』じゃないって言って、喰べちゃおうとしてる。
だって私は『狂乱のかとる』だし?
この部屋に入ったら喰べられちゃうんだよ?♡
「さあ、『かとる』とか『キャラ』とかを捨てた君を見せてよ」
アルタ先輩にはどうもそこにこだわりがあるみたいだ。
『かとる』、『しろ』、じゃない私。
『キャラ』を捨てた私?
演じるな、よそおうなという事かしら。
ベッドに座った。アルタ先輩が隣に座って、私の肩をつかみ自分の方に向かせる。
「君からキスして」
言われて、ふっと息をした。
そして唇を合わせる。
アルタ先輩が軽く私の唇をかむ。