第22章 アルタ先輩の推理日記
待ち合わせの場所に行くと彼はもういた。
私も少し早く来ていたのに。
「何時に来てたんですか?」
時計を確認してみるが、やはりまだ待ち合わせ時間前だ。
「『眠れなくて、五時にきてました』……とは言わないけどね、実際待ち遠しくて早くに来ちゃった」
アルタ先輩が薄く笑う。
それだけで、ぽうっと頬に熱がのぼってくる。
「『今日はどんな感じの予定なんですか……?』」
私もアルタ先輩の出したアニメのネタに乗った。
アルタ先輩は又笑ってくれる。
「夜の十二時まで映画見たい?」
「寮の門限過ぎちゃいます」
言い合って、笑う。
「見たい映画がある?」
アルタ先輩が切り出す。
私はちょっと考えて首を横に振る。
見たい映画が無い訳ではなかったけど―――。
映画を見たい気分では無い。
離れていた時間を埋めたい。
―――それをどう伝えよう。