第12章 やまおり(公式戦after.)
「梅鉄二人でやってもヘイトたまるだけだし。……何かFPSって気分でも無いなあ」
頬にそえた手を不器用にひっこめ、何もなかったかの様に言う。
「あっ、じゃあ、まだ途中のアドベンチャーゲームあったじゃん?それやる?」
「そうすっか」
携帯ゲーム機を引っぱり出し電源を入れて床に座りこむ。
すると瑠夏は後ろから肩に腕を回して顔を出す。
「……読む速度大丈夫だし?」
決定ボタンで文章を送りながら言う。
「大丈夫大丈夫」
暫く黙ってゲームを進めた。
やっているのは一昔前『ギャルゲ』と呼ばれたジャンルのアドベンチャーゲームだ。
ひょんな事から消息不明の父の研究していた時間を移動できるマシンを手に入れた主人公は時空を行ったり来たりする。
パーツを遡った時間軸で探し出しマシンの完成をめざす。
その途中、色んな女性達の裏事情を知っていき、時に恋仲になるのだ。
今はヒロインの一人を追っている途中。
「るかちは恋愛とかしないのし?」
思わず出てしまった言葉―――。
耳元で『くすっ』と笑う声がした。
「しないよ」
『出来ないが正しいかな?』と耳元でこぼれる言葉に振りむきたいのを堪えながらゲームを続ける。
「るかちなら誰とでも付き合えるし」
言えば又『くすっ』と瑠夏は笑う。
「……良いの。私の中にはもっと良いモノが詰まってるから」